寅さんシリーズの始まりと時代背景
 
 「男はつらいよ」はフジテレビ制作の連続ドラマとして1968年(昭和43年:3億円事件の年)10月3日から26回にわたり放送されました。当時はモノクロ放送でした。最終話で寅さんはハブに噛まれて死んでしまい終了のはずでしたが、「どうして あんないい人を殺すんだ」という多く声が揚がりました。それに応えて映画制作で蘇ることとなりました。
 映画「男はつらいよ」が始まった1969年というのは、いざなぎ景気で活況の中、一方学生運動によって騒然としていた時代でした。日本映画の低迷が言われる中、高倉健の仁侠映画に人気があった頃です。山田監督は、学生たちがこういったヤクザ映画に歓声をあげる態度に、「何だかよくないなぁ」と疑問をもったそうです。時代を担うべき若者が、ただアウトローを見ることに自分を慰めているということでしょうか。同じアウトローでも一風変わった「寅さん」は、こうした時代背景の中、世の中に登場したのでした。(参考:NHK「寅さん映画の世界」より)
作品タイトル (マドンナ) 公開日 主な出来事
「1作 男はつらいよ」
(光本幸子)
1969年8月27日公開 東大闘争安田講堂封鎖解除。美濃部都知事公営ギャンブル廃止発表。
「2作 続・男はつらいよ」
(佐藤オリエ)
1969年11月15日公開 東名高速道路全線開通。人類が初めて月に第1歩をしるした。
「3作 男はつらいよ フーテンの寅」(新珠三千代) 1970年1月15日公開 日本万博開幕(3/14〜9/13)。3/31日航機「よど号」乗っ取り事件発生。
「4作 新・男はつらいよ」
(栗原小巻)
1970年2月27日公開 植村直己5月エベレスト日本人初登頂成功。8月マッキンリー登頂。広中平祐フィールズ賞。米マスキー法案可決。公害問題がクローズアップ。
「5作 男はつらいよ 望郷編」
(長山藍子)
1970年8月26日公開
「6作 男はつらいよ 純情編」
(若尾文子)
1971年1月15日公開 第一・日本勧業銀行合併第一勧銀発足。群馬県警大久保清逮捕。
「7作 男はつらいよ 奮闘編」
(榊原るみ)
1971年4月28日公開 横綱大鵬引退。京王プラザホテル開業。環境庁新設。株価の暴落、ドル売りが殺到し「ニクソンショック」と呼ばれた。1ドル=308円となる。
「8作 男はつらいよ 寅次郎恋歌」
(池内淳子)
1971年12月29日公開 NHKテレビ全カラー化。最初のノーカーデーが八王子市で実施される。
「9作 男はつらいよ 柴又慕情」
(吉永小百合)
1972年8月5日公開 沖縄返還。佐藤首相引退。田中角栄内閣成立。日本列島改造論。日中国交正常化。連合赤軍のリンチ殺人、浅間山荘事件。
「10作 男はつらいよ 寅次郎夢枕」
(八千草薫)
1972年12月29日公開
「11作 男はつらいよ 寅次郎忘れな草」(浅丘ルリ子) 1973年8月4日公開 ベトナム戦争停戦。第4次中東戦争勃発。石油供給制限からのオイルショックにより物不足、買いだめに走る。都会ではネオンも消えた。「省エネ」が流行語。オセロゲームに人気。金大中事件が起こる。
「12作 男はつらいよ わたしの寅さん」(岸恵子) 1973年12月26日公開
「13作 男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」(吉永小百合) 1974年8月3日公開 田中角栄金脈へ批判。「クリーン」イメージの三木武夫内閣誕生。石油ショックにより戦後初のマイナス成長。地価、消費者物価の上昇、便乗値上げ、狂乱物価。
「14作 男はつらいよ 寅次郎子守歌」(十朱幸代) 1974年12月28日公開
「15作 男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(浅丘ルリ子) 1975年8月2日公開 ベトナムっ戦争は解放勢力が勝利。カンボジアでも解放勢力が制圧。不況が深刻化し、興人が戦後最大の倒産。
「16作 男はつらいよ 葛飾立志編」(樫山文枝) 1975年12月27日公開
「17作 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」(太地喜和子) 1976年7月24日公開 ロッキード事件表面化。灰色高官。ピーナツ等の流行語。総選挙で自民敗北により三木武夫退陣、福田赳夫内閣成立。周恩来、毛沢東死去。4人組逮捕。
「18作 男はつらいよ 寅次郎純情詩集」(京マチ子) 1976年12月25日公開
「19作 男はつらいよ 寅次郎と殿様」(真野響子) 1977年8月6日公開 200海里漁業専管水域実施。自民党派閥が一応解消。幸福の黄色いハンカチ上映。女優田中絹代死去(67歳)。王貞治756本塁打達成。
「20作 男はつらいよ 寅次郎頑張れ!」(藤村志保) 1977年12月24日公開
「21作 男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく」(木の実ナナ) 1978年8月5日公開 永大産業倒産以後、VAN、筑摩書房など大型倒産相次ぐ。成田空港開港。サンシャイン60開館。両国花火復活。西部ラインズ誕生。円高不況。大平正閣成立。
「22作 男はつらいよ 噂の寅次郎」(大原麗子) 1978年12月27日公開
「23作 男はつらいよ 翔んでる寅次郎」(桃井かおり) 1979年8月4日公開 第2次石油ショック。ガソリンスタンド日曜祝日全面休業。イギリスサッチャー政権誕生。ソ連軍のアフガン侵攻。NECパソコンPC-8001発表。ソニーウォークマン発売。
「24作 男はつらいよ 寅次郎春の夢」(香川京子) 1979年12月28日公開
「25作 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」(浅丘ルリ子) 1980年8月2日公開 大平内閣解散、首相急死。鈴木善幸内閣成立。ソ連のアフガニスタン軍事介入に抗議、日米中西独モスクワ五輪不参加。レーガン大統領誕生。
「26作 男はつらいよ 寅次郎かもめ歌」(伊藤蘭) 1980年12月27日公開
「27作 男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」(松坂慶子) 1981年8月8日公開 大関貴乃花引退。有楽町日劇48年の歴史に幕。ローマ法王初来日。ピンクレディー解散。ワレサ議長来日。ミッテラン仏大統領就任。深河で通り魔殺人。千代の富士横綱に昇進。英国チャールズ・ダイアナ結婚。ヤンバルクイナ発見。
「28作 男はつらいよ 寅次郎紙風船」(音無美紀子) 1981年12月29日公開
「29作 男はつらいよ 寅次郎あいじさいの恋」(いしだあゆみ) 1982年8月7日公開 ホテルニュージャパン火災。羽田着陸直前に墜落、心身症、逆噴射が流行語。テレホンカード使用開始。500円硬貨発行。フォークランド紛争。英国勝利。三越社長特別背任で逮捕。鈴木内閣総辞職。第1次中曽根内閣発足。
「30作 男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」(田中裕子) 1982年12月28日公開
「31作 男はつらいよ 旅と女と寅次郎」(都はるみ) 1983年8月6日公開 「日米運命共同体」「日本列島は浮沈空母」の中曽根発言に世論野党反発。国会の空転とロッキード裁判に揺れ年末総選挙。自民敗北を喫するが新自由クラブとの連立により第2次中曽根内閣成立。ディズニーランドオープン。
「32作 男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」(竹下景子) 1983年12月28日公開
「33作 男はつらいよ 夜霧に咽ぶ寅次郎」(中原理恵) 1984年8月4日公開 三浦和義ロス疑惑。植村直己マッキンリー登記単独登頂成功後消息を絶つ。怪人21面相によるグリコ森永事件の始まり。NHK衛星TV放送開始。有楽町マリオン完工。6匹のコアラが来日。1万、5千、千円の新札発行。
「34作 男はつらいよ 寅次郎真実一路」(大原麗子) 1984年12月28日公開
「35作 男はつらいよ 寅次郎恋愛塾」(樋口可南子) 1985年8月3日公開 科学万博「つくば85」開幕。日本エイズ患者第1号が明らかになる。NTT、JTの民営化スタート。日航ジャンボ機御巣鷹山に墜落。ドリフターズの「全員集合」が終了。阪神タイガース優勝。
「36作 男はつらいよ 柴又より愛をこめて」(栗原小巻) 1985年12月28日公開
「37作 男はつらいよ 幸福の青い鳥」(志保美悦子) 1986年12月20日公開 スペースシャトルチャレンジャーが打ち上げ直後爆発。男女雇用機会均等法が施行。ソ連チェルノブイリ原発事故。英国チャールズ・ダイアナ夫妻来日。伊豆大島の三原山209年ぶりに噴火。
「38作 男はつらいよ 知床慕情」
(竹下景子)
1987年8月15日公開 国鉄分割民営化。石原裕次郎死去(52歳)。利根川進教授ノーベル医学生理学賞受賞。売上税導入断念、中曽根退陣。竹下内閣発足。日米経済摩擦は激化。年末1ドル122円となる。
「39作 男はつらいよ 寅次郎物語」
(秋吉久美子)
1987年12月26日公開
「40作 男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」(三田佳子) 1988年12月24日公開 青函トンネル開業。連絡船の80年の歴史に幕。リクルート疑惑発覚。自衛隊「なだしお」と釣り船衝突。消費税の導入が決定。天皇の容体急変が国民の間に「自粛」をもたらす。
「41作 男はつらいよ 寅次郎心の旅路」(竹下景子) 1989年8月5日公開 昭和天皇崩御。新天皇即位、新元号平成となる。リクルート疑惑の新たな展開で竹下首相退陣、宇野政権もスキャンダルから短命に終わり、海部内閣が誕生した。社会党を中心に女性進出、マドンナ旋風。ベルリンの壁が撤廃され、東欧の社会主義政権も崩壊した。中国で天安門事件が起き社会主義体制が揺らいだ。
「42作 男はつらいよ ぼくの伯父さん」(後藤久美子・壇ふみ) 1989年12月27日公開
「43作 男はつらいよ 寅次郎の休日」(後藤久美子・夏木マリ) 1990年12月22日公開 イラク軍がクウェートに侵攻、全土を制圧。クウェート在住の日本人は軟禁されたが全員年末に帰国。日本人初の宇宙飛行士として秋山豊寛TBS記者が9日間の宇宙旅行を体験。86年からのバブル景気に陰りが見え始めた。
「44作 男はつらいよ 寅次郎の告白」(後藤久美子・吉田日出子) 1991年12月23日公開 湾岸戦争勃発。多国籍軍のイラク攻撃。自衛隊掃海部隊派遣。ソ連消滅。東側各地で民族紛争激化。
「45作 男はつらいよ 寅次郎の青春」(後藤久美子・風吹ジュン) 1992年12月26日公開 PKO協力法案成立。佐川急便、共和汚職など癒着事件発覚。金丸信議員辞職。
「46作 男はつらいよ 寅次郎の縁談」(松坂慶子) 1993年12月25日公開 長期不況で雇用情勢悪化。新党ブーム。自社両党による「55年体制」に幕。金丸信元自民副総裁逮捕。
「47作 男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」(かたせ梨乃) 1994年12月23日公開 細川連立政権誕生後分裂。自民社会魁連立村山内閣誕生。貴乃花横綱に。
「48作 男はつらいよ 寅次郎紅の花」(後藤久美子・浅丘ルリ子) 1995年12月23日公開 阪神淡路大震災。オウムサリン事件。沖縄米兵女子小学生暴行問題
1996年8月4日逝去享年68歳 住専不良債権処理、薬害エイズ、沖縄米軍基地整理縮小問題など。
「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別編」(浅丘ルリ子)   1997年